武術創造 DIY・AI研究所
武術創造 DIY・AI研究所 BUJUTSU-CREATION-DIY-AI LAB

第14話

「生徒」から「先生」へ:人生初の抜擢と、教育という原点

夢中で鑿(のみ)を研ぎ、木を削り続けた1年間。修了の時期が近づいた頃、私に思いもよらない話が舞い込んできました。

当時、教えてくれていた講師の方が二人、同時に辞められることになったんです。正規の新しい先生が決まってはいたのですが、その方は現場の責任者。今抱えている現場が終わるまでは、どうしても動けないという状況でした。

「お前、次の就職が決まっていないんなら、つなぎで非常勤講師をやらんか?」

正規の先生たちが困り果てた末に、私に声をかけてくれたのです。 「今年習ったことをそのまま教えればいいから。お前ならできるだろう」と。

「待遇なんてどうでもよかった。ボロボロの履歴書を抱えた私に、県が『教えてくれ』と頼んできた。そのことが、何よりの誇りでした」

即答で引き受けました。完全に特例です。私は職業訓練指導員資格は所有しておりません。 こうして3ヶ月間、私は非正規の講師として教壇に立ち、実習場を駆け回ることになりました。同じように就職を目指し、新しく入ってきた生徒たちに、自分が学んだ技術を伝える。

人生で初めて「人に指導する」という経験をしたこの時期のことは、今でも鮮明に思い出します。 自分が苦労して掴んだ「研ぎの感覚」や「段取りのコツ」を、どうすれば相手に伝えられるのか。それを模索した3ヶ月間こそ、今の私の原点です。

武術を伝え、DIYを教え、AIの活用法を説く。 今の「DIY・AI研究所」の活動の根底には、あの実習場でカンナ屑にまみれながら、必死に言葉を紡いでいた若き日の私がいます。

一度は社会から「不要」だと突き放された人間でも、技術を磨けば、必要とされる場所がある。 その手応えが、私の折れかけていた心に火を灯してくれました。

しかし、この「講師生活」もあくまで期間限定。 3ヶ月が過ぎ、任期を終えた私を待っていたのは、再びの「不況」という高い壁でした。