武術創造 DIY・AI研究所
武術創造 DIY・AI研究所 BUJUTSU-CREATION-DIY-AI LAB

第5話

認めながらも、割り切れなかった若き日のプライド

今なら、あの倉庫の哲学者たちの生き方を「本質的だ」と100%肯定できます。 テレビの健康法に振り回されてスーパーのバナナを買い占めるような連中より、よっぽど彼らの方が自分の足で立っていた。メディアの情報に踊らされず、自分の心身のストレスを基準に生きる彼らは、ある意味で究極に正直だったんです。

けれど、当時の私はそこまで割り切れませんでした。

学生時代は家庭教師なんかをやって、それなりの時給を稼いでいた自負もあった。 「自分は社会の一員として、ちゃんと稼いで、まともな生活を送るべき人間なんじゃないのか?」 そんな違和感が、どうしても消えなかったんです。

「自由はいい。でも、このまま終わるわけにはいかない」

何より、当時はまだ若かった。 異性に興味だってあるし、人並みに格好もつけたい。金がないことがどれほど惨めなことか、身に沁みてわかってしまったからこそ、「もう一度、ちゃんとやり直したい」という欲求が湧き上がってきたんです。

倉庫の彼らが選んだ「脱・社会」の心地よさに惹かれつつも、一方で「社会の中で勝負したい」という未練が、私を突き動かしました。

結局、私は一度仕切り直すことを決めました。 プライドを捨てて、実家に頭を下げて帰る。 それは、私にとって「敗北」を認めるような、ひどく苦い決断でした。

情報の濁流に流される大衆でもなく、かといって世捨て人にもなりきれない。 その中途半端な自分が、一番苦しかったのかもしれません。 でも、この時の「足掻き」があったからこそ、私は後の人生で、自分だけの「職人の道」を模索し始めることになります。

こうして私は埼玉の倉庫を去り、再び故郷の土を踏むことになったのです。